バーのカウンターのデザイン・造作にかかる費用は使用する素材(集成材、突板、無垢材)によって大きく変わります。物件を選ぶポイントはスケルトン物件を選ぶこと、そして設備容量(電気、ガス、水道)のチェックすることです。内装デザインを業者に依頼する際のコツは、より具体的なイメージを伝えるために「お店のコンセプト」、「レイアウトの図面」、「好きなデザインの内装の写真」などがあると良いです。

バーのカウンターのデザインにこだわり理想のお店を造る

カウンターはバーの顔と言えます。

カウンターのデザイン次第で、そのお店の雰囲気が決まると言っても過言ではありません。

また、バーのオーナーであるあなたの個性を発揮してこだわりを込めるべき箇所とも言えます。

ただ、デザインを頼むと言っても、どのようにすればいいのかなかなか難しいはずです。

そこで、店舗ディレクターの私が、理想のバーを造るためのノウハウお伝えします。

バーのカウンターのデザイン・造作にかかる費用は使用する素材によって大きく変わる

バーのカウンターのデザインを考えるには、まず、素材選びからです。

どのような雰囲気のお店にしたいかをイメージし、見合った素材を決めます。

そして、デザインは、お店のコンセプトや店名などを踏まえ、周りの内装とも調和するものを考えていきます。

ここでは、4m程度のカウンターを前提に、天板の素材と価格を具体的にご紹介します。

まず、とにかく工事予算を抑えたい場合。

その場合は「集成材」という素材を使います。

この素材を使うと、加工・仕上げ・設置費で15万円程度でカウンター天板を造ることが出来ますが、どうしても安っぽさを感じてしまいます。

次に、もう少し高級感を出したい場合は「突板」という素材を使用する事になります。

突板は天然の木を薄くスライスして、ベニヤに貼り付けたもので、いわば表面だけは本物の木です。

突板を使う事で、本物の木の質感や、素材感を出すことが出来ます。

突板天板の加工・仕上げ・設置費で25万円程度となります。

3つ目は、最も高級感を出すことができる素材として、「無垢材」があります。

無垢材とは天然の木のことで、素材感や風合いによる雰囲気が、やはり他の素材とは断然違います。

無垢材天板の加工・仕上げ・設置費で40万円程度です。

また、天板以外に、カウンターを構成するには、立ち上がり部分の壁、足置きなどが必要になります。

これらの部分は、天板に併せて素材やデザインを検討します。

製作費としては30万円程度~となり、上記天板それぞれの価格に加算される事になります。

上記は長方形のカウンターとしての費用ですが、レイアウトやデザインから変形やR形などのカウンターを造る場合もあります。

変形やR形は、材料を多く使い、造作にも手間が多くかかるため、費用も高くなります。

デザイン、立ち上がり壁、足置きなどを含めて80万円程度です。

バーの店舗造りには理想のスケルトン物件を選ぶ

お店を出店される際、ほとんどの場合、店舗物件を借りて、まず最初に内装工事をする事になります。

店舗の内装工事費用は、よく「坪単価」という見積もり単位がありますが、この坪単価は、店舗の種類によっては、大きく変わる場合があります。

これは、厨房設備や排気・換気設備などの工事内容のボリュームよって、工事費用が一気に跳ね上がる事が原因です。

特に、飲食店の場合、レイアウト以外にも、その物件のもともとの状態・条件によっても、工事内容が大きく変わる為、坪単価は ”あくまでも目安” 程度と考えておいた方が良いと思います。

しかし、バーの場合は、大きな厨房や高容量の機器などを必要としないため、工事費用を大きく跳ね上げる要素があまり無いと言えます。

敢えて言えば、電気・ガス・水道などの元々の設備容量が極端に少なく、容量アップの工事を必要とする場合や、消防署の指導による工事により、大きな費用がかかることがありますが、基本的には、バーの場合は、仕上げに極端なこだわりが無ければ、坪単価を基準に工事費用を想定して良い業態と言えます。

そして、この「坪単価」は、居抜き物件の場合とスケルトン物件の場合でも変わってきます。

居抜き物件の場合は、言うまでもなく、以前の業態がバーだった居抜き物件です。(空調・換気等 諸設備機器が正常に使用できる状態を前提とします。)

バー以外の居抜き物件では、結局、レイアウト変更のための解体工事や、機器の入替えなどが発生するため、余計な費用がかかってしまい、メリットがありません。

また、以前バーだった居抜き物件であっても、メリットを活かすには、あなたの理想に近いレイアウトや内装デザインで、ほとんど既存のレイアウトを変更しないことが前提となってしまいます。

そういう意味では、居抜き物件はあなたのイメージと一致していない限りは、料金を下げるための妥協とも言えるのです。

つまり、新しいこだわりのカウンターやデザインをお考えの方であれば、基本的にスケルトン物件を選び、スケルトンでの坪単価から工事費用を想定しておく事が良いと言えます。

以下が、10~30坪程度の居抜き、スケルトンの場合の坪単価となります。(東京都内・首都近郊、デザイン会社への工事依頼)

  • 居抜き:坪単価 20万円~
  • スケルトン:坪単価 40万円~

物件を選ぶポイントは設備容量のチェックとレイアウトとの検討

出店にあたり物件を選ぶ際、まず基本は、電気・ガス・水道などの設備容量が、今から始める業態に合っているかのチェックが最も大切になります。

一般的なバーの業態(10坪程度)で必要な最低設備容量の目安は以下のとおりです。

  • 電気 電灯40A
  • ガス 4号メーター
  • 水道 20A

この設備容量が足りていない物件は、バーの業態として運営する為には、設備容量をあげる工事が発生します。

これ以外にも、お店を開業する際は、各地域所轄の消防署による検査に合格しなければなりません。

入居している建物の規模や、お店のレイアウト、使用する熱機器によってさまざまですが、法律に定められた、防火設備の設置や避難経路の確保などが義務付けられます。

これは、工事の設計が確定して、はじめて正確な消防署の指導が決定するため、最初の段階では分かりにくいものですが、例えば、以前入居していた店舗が同じ業態であれば、消防の指導も少ないでしょうし、ビルの上階であれば、窓に避難器具の設置などを指導される可能性があり、レイアウトを決める要素の一つとして考える事が出来ます。

消防の指導による工事は、物件を契約してから発覚し、費用的な問題になる事が多いので、最初から意識しておくことが大切です。

設備の問題が解決したら、次は、理想のレイアウトが造れる間取りかの検討です。

バーの場合は、長いカウンターメインでお店造りができます。

その為、間口が狭く、他の業態だと使い勝手が悪く敬遠されるような物件であっても、お店を構えることが出来るという点で、物件は見つけ易いと言えます。

物件に目星を付けたら、次は、必要な厨房の大きさ、カウンターの位置、客席数やテーブルの有無などから、理想のレイアウトを考えます。

収納なども、オープンしてから足りないと気づく見落としがちな部分ですので、あらかじめ検討しておく必要があります。

このように、オーナーであるあなたが、いかに初めに、オープン後のお店のイメージや細かいレイアウトを考えるられるかどうかが、オープン後の運営の良し悪しだけでなく、工事予算の削減や工期短縮にも関わってくるポイントになります。

内装デザインを業者に依頼する際のコツは、より具体的なイメージを伝える事

物件が決まったら、坪単価から大体の内装費用を算出します。

その金額をベースにして、内装デザインを業者に依頼することになりますが、その段階で、あなたの想定していた予算と、坪単価から計算した金額が大きくかけ離れていた場合は、ご融資の検討をお勧めします。

坪単価の相場には、それなりの理由があります。

業者との交渉で、ある程度は見積金額を下げれたとしても、それ以上の大きな減額を求めると、業者側としてはどこかで手を抜くなどの方法で対応するしかなくなります。

これは、施工不良などの後々の問題につながる事になりかねません。

また、実際に内装デザインについては、業者に相談する前に、依頼側のあなたには十分な準備が必要となります。

理想のデザインや、考えているレイアウト、使用する厨房機器など、あなたの依頼内容が具体的であればあるほど、内装工事の見積もり金額は正確なものになります。

逆に、依頼内容があいまいな場合は、業者は、後から見積り金額が上がって問題になる事態を避けるため、色々な不備が起こる可能性を予測して見積りを出すことになり、見積金額が高くなる傾向になります。

用意するものとしては、「お店のコンセプト」、「レイアウトの図面」、「好きなデザインの内装の写真」などがあると良いです。

「コンセプト」はお店を造る上での全ての指針となるものなので、これが定まっていないと、内装デザインも中途半端なものになってしまいます。

「レイアウトの図面」は、手書きでも良いので、店舗物件のサイズに合わせて、細かい要望を踏まえたものを作っておくと良いです。

「好きなデザインの内装の写真」は、例えば、あなたが見本にしたいバーの写真があればイメージが伝わり安くなります。

次に、カウンターの内側に設置する厨房機器、具体的には冷蔵庫や冷凍庫、熱機器などについてもあらかじめ検討が必要です。

提供する食材や飲料によって、機器のサイズと設備容量が変わり、設置できる場所も変わってきます。

導線計画や、設備設計にも影響が出てくる重要な部分ですので、レイアウトと一緒に考えると良いと思います。

また、細かい部分では、電話やインターネット回線の設置場所や音響機器についても意識しておきます。

電話やインターネット回線の配線は、後回しになることが多いのですが、これが原因で配線が露出になってせっかくのデザインの見栄えが悪くなるという場合もあるからです。

これらの項目をあらかじめ準備しておくことで、工事を発注した後の業者の動きがよりスムーズになり、工事金額を抑える事にも繋がります。

また、なにより、理想のお店を造るという目標のために、内装工事においてオーナー様が努力できる唯一の部分とも言えます。

しかし、はじめての出店で、よくわからないという方も多くいらっしゃいます。

その場合、当店では、「レイアウトも含めデザインを提案してください」というお客様に対して、工事の依頼を受ける際「ヒアリングシート」というものを使って、依頼主様の嗜好をリサーチさせていただきます。

このツールでは、物件の概要の他、クライアントのライフスタイルや好きな食べ物、好きな本、映画、サービスやコンセプト、造作・設備要望などの質問をさせて頂くものです。

質問の答えを直接的に内装デザインに反映するものではありませんが、お客様との意識を共有する狙いがあります。

意識を共有する事で、デザインを考える上での指針やヒントとなり、よりお客様の理想に近づける事が出来ます。

お店を造るにあたり、レイアウトもデザインも全てを内装業者にお任せでと考えられている方は、その業者さんが嗜好リサーチツールを使っているかどうかの確認をすると良いでしょう。

安心して内装工事を任せられる業者かどうかの判断材料になると思います。

当店では、以上を踏まえた上で、内装の完成イメージをあらかじめ3Dパース(立体的な絵)としてお作りしています。

簡単なイメージ図と口頭の説明だけでは、実際の出来上がりと相違がでる可能性があります。

現在では、ほとんどのデザイン会社は、3Dパースを作成していますので、イメージの相違が無いよう、最初に3Dパースを見て、工事前に正確なイメージを確認しておくと良いと思います。

これからバーを出店したいと考えられている方は、是非、今回のポイントを踏まえ、あなたにとって何よりも大切な「理想のお店を造り」を成功させて頂ければと思います。