小規模カフェの厨房をつくる場合は、基本的に設置する厨房機器や収納やゴミ箱の他に、提供するサービスによって必要になるものと、保健所の基準を満たすために必要になるものがあります。厨房のスペースは、それらを洗い出し、作業性と導線を踏まえとて考えなければなりません。

初めて小規模なカフェの出店を考えている方は、厨房にどのような機器やスペースが必要か、分からない事も多いと思います。

厨房スペースの広さが分からないとレイアウトも考えられませんし、機器の目星がつかないと予算組みも出来ません。

そこで、今回はカフェの厨房を計画する為に必要な機器やスペースについて、詳しく解説していきたいと思います。

小規模カフェの厨房に必要なスペース

カフェの厨房に必要なスペースを割り出すには、機能的に必要な厨房機器の他、食器収納やごみ箱のスペースも考慮する必要があります。

また、保健所の基準で設置する必要があるものも考慮する必要があります。

それらの寸法を当てはめ、作業性と導線を踏まえて考える必要があるのです。

厨房機器

一般的なコーヒーを提供する小規模カフェの厨房機器として挙げられるのは、「冷蔵庫」、「製氷機」、「シンク」です。

冷蔵庫

「冷蔵庫」は業務用ではなく家庭用の物を置いているお店も見かけますが、選ぶ基準を解説します。

容量としては、小規模なカフェであれば、家庭用の冷蔵庫でも問題ありません。

家庭用は業務用と比べて製品価格が安く、排水を繋ぐ必要も無い為、コンセントがあれば、工事することなく設置ができ、工事費の削減になります。

機器費と工事費併せて5~10万円の削減が見込めます。

業務用の冷蔵庫は、扉を頻繁に開け閉めする場合に、庫内の温度変化への対応や、機器の耐久性が高いのが特徴です。

大きな庫内の温度変化で品質が落ちやすい素材もあります。

例えば、コーヒー豆の品質維持にこだわっているような場合は、業務用を選ぶと良いでしょう。

また、業務用の冷蔵庫は、「コールドテーブル」と呼ばれるように、高さが低く横長で天板で作業が出来るよう頑丈な作りになっています。

寸法も、業務用のシンクや作業台との高さや奥行きが統一されることで、作業性も良くなります。

それ以外にも、カウンターの下に入れ込む事で、作業している手元を隠せることもポイントです。

一方、家庭用冷蔵庫を使う場合は、奥行や高さもシンクなどと統一されない為、天板での作業はできません。

あくまでも、上部は物置として活用して、作業台は別途設置する必要があります。

機器自体の見た目も良いとは言えないので、設置する場所はよく考えなければなりません。

業務用冷蔵庫の例)ホシザキ RT-63PTE1 内容量 72L 幅630㎜×奥行450㎜×高さ800㎜ 単相100V 消費電力120W 排水必要 価格 約7.5万円

製氷機、冷凍ストッカー

「製氷機」の選定は、一日の来店人数から考えます。

一日の来店人数が30名以下であれば、家庭用のタイプでも良いですが、30名以上になる場合は、製氷能力25㎏の製氷機(業務用では最小)の設置をオススメします。

「冷凍ストッカー」と併用する事で、製氷能力25㎏で一日の来店人数100名くらいまで対応可能です。

製氷機は、他の業務用厨房機器と高さが合わないので、作業性を考慮し、設置場所に検討が必要です。

業務用製氷機の例)ホシザキ IM-25M 製氷能力 25㎏ 幅395㎜×奥行450㎜×高さ770㎜ 単相100V 消費電力160W 給水排水必要 価格 約15万円

冷凍ストッカーの例)SANDEN PF-057XE 内容量 42L 幅485㎜×奥行327㎜×高さ860㎜ 単相100V 消費電力85W 価格 約4.5万円

シンク

「シンク」は、保健所の基準で2槽シンク(1槽の大きさ・内径の目安:幅45㎝×奥行36㎝×深さ18㎝以上)か、1槽+食洗器のどちらかを設置をすることになります。

シンクは寸法の決まった既製品もありますが、基本的には発注後に向上で製作されるものです。

そのため、割高になりますが、逆に自由に寸法を設定することができます。

2槽シンクの例)既成寸法 幅1200㎜×奥行450㎜×高さ800㎜ 給水排水必要 価格 約7万円

1槽シンクの例)既成寸法 幅450㎜×奥行450㎜×高さ800㎜ 給水排水必要 価格 約3.5万円

※シンク以外に混合水栓が別途必要となります。(参考価格 1.5万円/個)

給湯器、電気温水器

シンクからお湯を出すためには、給湯器もしくは電気温水器の設置が必要となります。

給湯器は他の厨房機器とは違いガスが必要となり、ガス工事が必要になります。

設置場所は主に外部となるので、外部の給湯器からシンクの混合水栓まで配管を繋げる工事も別途必要となります。

賃貸物件にもともと給湯器が付いていれば、それを利用するのも良いですが、新設する必要がある場合でも、カフェはお湯を使う量が少ないので、小型の電気温水器で十分です。

シンクの下棚に設置できるので、スペースも取りません。

電気温水器の例)LIXIL EHPN-F6N4 容量 6L 幅175㎜×奥行290㎜×高さ447㎜ 単相100V 消費電力450W 給水排水必要 価格 約3.5万円

その他の必要品

厨房機器以外にも厨房の機能を満たすもの、あるいは提供するサービスによって必要になってくるものがあります。

エスプレッソマシン、コーヒーメーカー

カフェにとってはメインとなる機器として、エスプレッソマシンやコーヒーメーカーがあります。

デザイン性が高く、パフォーマンス的にも見せる機器として、カウンターの上などお客様から見えやすい場所に設置します。

エスプレッソマシンは給排水の接続と、浄水器を間に挟む工事が発生します。

また、消費電力の高い機器(1500W~)が多いので、物件の電力が足りるかどうかの検証も必要になります。

収納棚

コーヒーカップやお皿や、ストローなどのストックを置く収納スペースが必要になります。

収納棚の大きさは収納したいものの数によりますが、奥行きがありすぎると使い勝手が悪い収納になるので、奥行きは40㎝迄が使い易いです。

設置場所としては、厨房機器が低い位置に並ぶので、その上の空間を利用します。

収納棚は空間の上方に設置する事で、厨房スペースを有効に活用できます。

ゴミ箱

計画時に忘れがちなものとして、ゴミ箱スペースがあります。

お客様には見せたくないものなので場所も限られます。

営業が始まってからゴミ箱スペースを無理やり作ることにならないよう、設置するゴミ箱の寸法を予め決めて、最初の計画に入れ込む事が大切です。

設置場所は、必然的にお客様からの死角となるカウンターの下になりますが、カウンターの下は、シンクやコールドテーブルなども並びスペースが無くなりがちになる為、十分な計画が必要です。

オーブン

焼き菓子を提供する場合は、オーブンなどの熱機器が必要になります。

熱機器を設置する場合は、上部に排気フードの設置が義務付けられています。

そのため、機器とは別でフード設置が必要となりますが、この工事費用がかかり安くありません。

フード一式の費用と設置工事費用で20万円程度、外壁の換気穴がフードと離れている場合は、配管で繋げる為、さらに工事費が膨らみます。

オーブンの例)マルゼン コンベクションオーブン MCOE-064B 棚数 3段 幅600㎜×奥行450㎜×高さ540㎜ 3相200V 消費電力3500W 給水排水必要 価格 約25万円 /  棚付き専用架台 MCOE-064STR 棚数 7段 幅600㎜×奥行450㎜×高さ800㎜ 価格 約4.5万円

ショーケース

お菓子を展示するショーケースを置く場合もあると思います。

小規模カフェの場合は、卓上の小さいもので、お客様の目につくカウンターの上に設置します。

ショーケースの例)タイジ OS-J2 上段:W402xD240xH178下段:W445xD340xH180 幅460㎜×奥行356㎜×高さ457㎜ 単相100V 消費電力4.8W(照明用) 価格 約6.5万円

保健所の基準項目

厨房には、機能的に必要なもの以外に、保健所の基準により設置する必要があるものがあります。

上述している槽数や大きさのシンク以外に、扉付きの食器戸棚、従業員用手洗いです。

扉付きの食器戸棚は、コーヒーカップやお皿を収納する棚と兼ねることが出来ますが、見せる収納が欲しい場合は、別途で扉付きの収納を設置しなければなりません。

従業員用手洗い(手洗器外径の目安:幅36㎝×奥行28㎝以上)もシンクとは別に設け、固定式の消毒装置を付ける必要があります。