ドライヤーを使用する美容室物件は、物件のブレーカー容量の大きさの確認が必要です。ドライヤーで使用する電灯ブレーカーは、メインブレーカーと小ブレーカーそれぞれに容量の上限があり、それぞれの容量を確認する必要があります。特にメインブレーカーの容量アップは物件の状況によって容易に出来ない場合があるので注意が必要です。

美容室の物件を決めるポイントの一つとして、ブレーカーの容量があります。バーやカフェなどの他の業態と比べると、美容室はブレーカーの容量が多く必要な業態だからです。

ブレーカーの容量を使う大きな要因としては、美容室ではドライヤーを使用する為です。

家庭でもドライヤーを使用してブレーカーが落ちるという事はよくあることですが、特に美容室では、同時に複数のドライヤーを使うことがあるため、適したブレーカーの確保が必要になります。

今回は、美容室物件における重要なポイントであるブレーカーについて、詳しく解説していきます。

ドライヤーは電灯ブレーカーを使用する

ブレーカーとは、電気の使用料を制限する為の設備です。

電気には、電灯(単相100V)と動力(三相200V)という種類があり、使用機器や目的に応じてどちらかを選ぶことになります。

電灯(単相100V)
一般家庭で使われる電気の種類です。美容室ではドライヤーや照明などの一般的な電気製品用に使います。

動力 (三相200V)
主に業務用エアコンなどの大きな電力を消費する機器を動かすための電気として、店舗などでよく使われる電気の種類です。
業務用のエアコンを設置する場合などは最低30Aのブレーカーが必要になります。

ドライヤーは電灯(単相100V)の電気を使います。

つまり、美容室では、電灯ブレーカーの容量が小さいとブレーカーが落ちる原因となります。

メインブレーカーと子ブレーカーのそれぞれの容量を確認する必要がある

電灯ブレーカーをさらに詳しく見てみます。

電灯ブレーカーには、メイン(親)ブレーカーと子ブレーカーというものがあります。

ご自宅の電気分電盤を見てもわかりますが、盤の左側にあるアンペア数(A)が書かれた大きなブレーカーがメインブレーカーです。

これが、物件全体で使用できる電灯の電力を示しています。

そして、メインブレーカーの右横に並んでいる小さいブレーカーが子ブレーカーです。

物件内のコンセントや換気扇などの電気機器が、各子ブレーカーに振り分けられています。

振り分ける基準は、物件の工事の際、使用する電気機器の電力を、子ブレーカーが落ちない程度に計算して振り分けられます。

これが、一般的なブレーカーの構造となっています。では、なぜブレーカーが落ちるのか、その理由を説明していきます。

メインブレーカーが落ちる理由

メインブレーカーが落ちる理由は、物件全体で使用する電力の合計がメインブレーカーの容量を超えた時です。

例えば、メインブレーカーに30Aという表記がしてあった場合は、物件全体で6000W以上の電力を同時に使用した場合にブレーカーが落ちます。

50Aの場合は10000Wとアンペア(A)数に対して200倍のワット(W)数が使用できます。

これに対して、子ブレーカーは上限2000Wとなっていて、各子ブレーカーに振り分けられた電気機器の同時に使用する電力の合計が2000Wを超えた場合に落ちます。

このように、ブレーカーが落ちる原因は2種類あるという事です。

美容室で使うドライヤーは、主に1500Wの電力を使うものが多く、2台同時に同じコンセント回路から使用すると、3000Wとなり子ブレーカーが落ちてしまうのです。

つまり、ドライヤーを使用する場合は、ドライヤーを使用するコンセント1個に対して、子ブレーカーが1回路必要になるという事になります。

これを、単独回路と呼びます。

メインブレーカーの容量の決め方

単独回路にすれば、子ブレーカーが落ちることはなくなりますが、次の問題は、メインブレーカーです。

メインブレーカーの容量は、借りる物件によって様々です。

以前の業態が、電力をあまり使用しなかった場合は、小さい容量のブレーカーがついています。

美容室のドライヤー使用で必要となるメインブレーカーの容量について考えましょう。

10坪~15坪程度で、電力をあまり使わないカフェやバーのメインブレーカーは30~40A位です。

同じ坪数の美容室であれば、30~40Aにドライヤー分がプラスになると考えられます。

セット面が3台でドライヤーの同時使用が3台だとすると、4500Wになるので、22.5Aがプラスで必要となります。

常に全ての電気をフルで使うわけでは無いので、電気稼働率を80%位と考え、店舗全体で50A~60Aのメインブレーカーの容量が必要になるという事が分かります。

メインブレーカーの容量アップの可否は物件の状況で決まる

子ブレーカーは、数を増やし単独回路を増やすことで、落ちる事を解消できますが、メインブレーカーが落ちる事を解消するには、ブレーカーの容量アップが必要になります。

容量アップが出来るかどうかには、物件の状況によって変わります。

電柱から建物外部の電気メーターまでの引込線が容量アップ出来るサイズの電線となっているか?
なっていない場合は、東京電力に申請して無料で電線の引き直しをしてもらえます。

引き直しには申請から1ヵ月程時間がかかります。

次に、建物外部の電気メーターから店内にある分電盤までの電線が、容量アップ出来るサイズとなっているか?

なっていない場合は、内装工事にて電線の引き直し作業を行い、メインブレーカーの交換をします。

費用はおおよそ15~20万円程掛かります。

電柱から電気メーターまでの電線と、電気メーターから分電盤までの電線のサイズが容量アップ出来る線であった場合には、電気の契約を変更するだけで容量アップが可能です。

ブレーカーの容量アップが出来ない場合

簡単にブレーカーの容量アップが出来ない場合があります。

物件がビルなどの場合に、キュービクルという設備を設置してビル全体の電力を一度そこに集めてから各部屋に割り振っている場合があります。

その場合はビル全体そのものの容量が決まっているため、キュービクルの容量に余裕がない時はブレーカーの容量が上げられない場合があります。

その場合、新たに電線を引っ張ってこなければならなくなり、100万円単位の費用が掛かる工事になってしまいます。

ブレーカー容量はあらかじめ確認して、こういった物件は借りないように注意が必要です。