内装工事費は開業資金の大きな割合を締めますが、その詳細は一般的にはわかりづらく、内装会社にお任せしているという事は無いでしょうか?自分で工事の内訳を把握する事で、無駄を省き、開業資金計画を円滑に進めることができます。ここでは、どのような流れで美容室の内装工事が行われ、各工事の費用がどのように決められるかについて、10坪程度の美容室を造る場合の費用について詳しく説明させて頂きます。

解体工事

新しいお店のレイアウトや機能を満たすために、既存の内装や設備(水道、電気、ガス、空調、換気、防災)を壊す工事です。
例えば、既存が全て残っていて、床、壁、天井、設備全てを解体する場合は40~50万円程度の費用が掛かります。
逆に壊すものが無ければ発生しない工事です。
解体費を抑えるには、以前が美容室の居抜き物件か、スケルトン物件を選ぶ事が良いと思います。

天井・壁工事

天井、外周の壁、部屋の間仕切り壁をたて、塗装やクロス貼りをする為の下地面をつくる工事です。
軽鉄や木材で下地を骨組みし、石膏ボードという材料をビスで張っていきます。

●10坪の天井・・・約12万円
●高さ約2.5mの外周壁・・・約20万円
●トイレやスタッフルームなどの間仕切り壁・・・10~20万円

工事費用を抑える為には、天井や、外周壁をつくらず、スケルトン状態のまま使用する方法もありますが、天井や壁をつくるとメリットもあります。
外壁との間に空気層を作ることで冷暖房効果を高めることと、電気の配線や換気扇のダクトなどを隠せるので、余計なものが無く一般的に美しい仕上りとなる事です。

床上げ工事

美容室にはシャンプー台が必要になります。
シャンプーの水はシャンプー台の排水管から、1%の勾配を付けて建物の排水管に結ばなければなりません。
その為、シャンプー台の床を上げて、その中に排水管やお湯・水の給水管を通す工事が必要になる場合があります。

シャンプー2台分設置の広さとして
●床上げ(下地ベニヤ張りまで)・・・約10万円
●高価な仕上げ(フローリング)・・・15~20万円
●安価な仕上げ(ビニールタイル)・・・約8万円

床が一部分だけ上がっていると、空間が狭く感じる上、つまづき易くもなるので、できるだけ部分的に床を上げる事は避けたいところです。
建物の排水管や給水管の位置を考慮したレイアウトと、サイドシャンプー台を使用し、壁内に配管をする事で、床上げ工事を無くすことができます。

内装仕上げ工事

天井、壁、床の表面の仕上げの工事です。
天井、壁の一般的な仕上げ方法は、クロス貼りや塗装ですが、高級感や素材感を出す為に、木板張りやタイル貼りなどを仕上げ材として使用します。

●クロス貼り(一般材)・・・約1,500円/㎡
●塗装・・・約2,000円/㎡
●木板張り、タイル貼り・・・約8,000~15,000円/㎡

内装仕上げ費を抑えたい場合は、ベースはクロス貼りや塗装を選び、高価な木板張りやタイル貼りを、柱部分だけなどのポイントで上手く使用すると良いです。

造作工事

造作工事とは、受付カウンターやセット面カウンターを造る工事です。
費用の増減は、寸法と使用する素材によって決まります。

受付カウンターの費用の目安(奥行500㎜)
●幅1000 仕上げ 突板材・・・・約15万円
●幅2000 仕上げ 突板材・・・・約20万円
●幅1000 仕上げ 無垢木材・・・約25万円
●幅2000 仕上げ 無垢木材・・・約30万円

壁付けセット面カウンターの費用の目安(幅600㎜、奥行250㎜、棚受け含む)
●突板材・・・5万円
●無垢木材・・・約5万円
●大理石・・・約8万円

造作はお店の雰囲気を大きく左右する部分なので、良い素材を選び、十分な検討が必要な場所と言えます。

家具工事

シャンプー台用のタオルキャビネットやセット面のミラーなどです。
特にタオルキャビネットは既製品と、オーダーメイド品とで大きく差が出ます。
これは、大量生産の既製品に比べ、オーダーメイドで造ると、タオル取り出し口の丸穴開けや、扉製作などの手間がかかる為です。

●タオルキャビネット(オーダーメイド)・・・10~15万円
●木枠セット面ミラー壁付け(600×900)・・・約5万円

費用を抑える場合は、既製品を購入する以外に、既製品の機能を残しつつ表面の仕上げだけを変える方法があります。

建具工事

トイレやスタッフルームに扉をつける工事です。
建具は、主にベニヤで造ったものに塗装するなどの方法で仕上げます。
●製作品(仕上げ塗装含む)・・・約8万円
●既製品・・・4万円
建具もシンプルな既製品は安いものがあり、スタッフルームの扉などは既製品を使い、費用削減に繋げることができます。

電気工事

電気工事は、店内の照明器具、コンセント、換気扇やエアコンへの電源供給工事を指します。
工事費用は、約30~40万円、別途照明器具費が15~20万円かかります。
費用を抑える方法は、まず、ベース照明と呼ばれるダウンライトや天井付けの照明などの空間の明るさをとる照明器具費を下げます。
ベース照明は器具数が多く必要なので、ベース照明器具の価格を下げる事で、コストダウンを図れます。
他には、天井に「配線ダクト」と呼ばれる、照明器具をワンタッチで取り付けることができるレールを取り付けます。
こうする事で、工事業者が一つ一つ照明器具用の配線をしたり、設置する手間が省け、工事費の削減になります。
電気工事をはじめ、設備工事は工事費用が跳ね上がる場合があります。
電気工事では、既存の電気容量が足りていないと、ブレーカー交換や電線の引き直しが発生し、15~20万円の追加工事費がかかってしまいます。
電気容量は、10坪程度の美容室であれば、電灯ブレーカーで60A、動力ブレーカーで30A以上あれば問題ないですが、それ以下の場合は使用するドライヤーの数や機器を調べ内装会社に相談する事が重要です。

水道工事

水道工事はシャンプー台やトイレ、手洗い器への排水管、給湯・給水管の配管と設置工事になります。
工事費用はシャンプー台×2台とトイレ、手洗い設置で約30万円です。
別途でシャンプー台や便器、手洗い器の機器費がかかります。
●タンクレス便器(安価なもの)・・・約10万円
●タンク付き便器(安価なもの)・・・約6万円
●手洗い器・・・3~5万円

美容室はシャンプーが不可欠ですので、水道管の大きさや水圧が確保されていなければいけません。
引込水道管の口径20㎜以上、水圧は2.0以上ないと、増厚ポンプの設置が必要となり、15~20万円の追加工事費となります。

ガス工事

ガス工事は給湯器への配管と、設置工事です。
シャンプー1台につき20号給湯器1台設置と考えます。
約15万円の工事費と別途給湯機器費5~6万円です。
給湯器が壊れてシャンプーが使えなくなることを避ける為、1台のシャンプー台に対し、給湯器1セットとし、壊れても他のセットが使えるようにすることも検討すべき点です。
また、ガス工事の注意点は、メーターの容量が足りない場合です。
6号メーター以上あれば問題ないですが、容量が足りず、配管を道路の本管から引込み直す場合は、100万円近い工事費になることもあり要注意です。

空調工事

空調工事はエアコンの設置工事のことです。
エアコンには、風の吹き出し方や、設置の仕方で色々な種類があります。
店舗につけるタイプは、一般的には「天井カセット式」と呼ばれる物が多いですが、工事費と機器費含み約40万円かかります。
10坪の美容室であれば「壁掛け式」を選ぶ事で、費用を下げることができます。
機器費込みで約15万円ですが、さらに、安くする方法は、家電量販店で施工付きの製品を購入する方法です。
価格は約半分ほどで済む場合もあります。
壁掛け式のデメリットは、見た目の悪さです。
家庭で使用するものなので、店舗の雰囲気を壊してしまい、エアコンを隠すあしらいが必要になったり、目立たない場所に設置してエアコン効率が悪くなる場合があります。

換気工事

換気工事は店内やトイレに設置する換気扇の工事です。
外壁の穴から、所定の換気扇の位置に、ダクト管で配管し換気扇を取り付けます。
また、外壁の外側には雨除けのカバーを付けます。
外壁に穴が空いていない場合で、外壁への新たな穴開けが禁止されている場合は、窓のガラス部分を、鉄板に入替え穴を開けて対応します。
上記の工事で店内とトイレに1箇所づつの換気扇設置として、約20万円です。

防災工事

防災工事は消防法による、誘導灯、消火器、煙感知器の設置工事です。
また、設置機器は消防署に申請が必要になり、申請費も発生します。
上記設置の場合で約20万円ですが、地域や入居する建物の規模や物件の階数などで、さまざまな消防署の指導が入ります。
指導の内容によっては、思いもよらない費用が発生する場合があります。
消防署の指導は各地域によっても変わってくるので、対策としては、レイアウトが決まった時点で、所轄の消防署に相談に行く事です。

仮設工事・雑工事

本工事に付随して発生する工事です。
●工事用の仮設電気や仮設水道の設置・・・約3万円
●ガラスや共用部分の床などの養生・・・約3万円
●工事中の清掃や片付け・・・約2万円
●墨出し(壁の位置や設備の位置出し)・・・約5万円
●産業廃棄物処分費・・・・約5万円
●スタッフルームの棚や机造作など・・・5~10万円
●スピーカー設置・・・5~10万円

設計・施工管理費

デザイン、レイアウト図面作成、設備図面作成、外注打合せ、工程管理、品質管理、車両・交通費、会社経費などが含まれます。
30~60万円程度と考えられますが、各内装会社が社内で決定していて、金額が大きく異なる部分でもあります。
また、設計と施工が別々の会社であれば、会社経費は重複してかかってきますし、会社の規模が大きければ、その分会社経費も多くなります。
デザインを重視する場合は、設計と施工が別々の会社が良いです。
また、費用を安くしたい場合は、設計と施工までを行っている小規模の会社を選ぶ事です。